4話
安置室で見付けた狢を連れて、事務所に戻ってくると机の上に狢を置いて、その周りを取り囲むようにして、全員が座った。狢は、ただならぬ雰囲気を察しているのか、びくびくしている様子だった。颯介の襟から顔を出して、狢に興味を持った管狐が近寄り、ふんふんと臭いを嗅いでいるだけでも、びくついている。
「それで?鎖で繋がれた女と一緒だったんだろ?何でだ?」
「何で?捕まったから。あいつら、最近妖怪たちを殺して回ってるやつらだ。顔に布を巻いてる人間たち」
「…そうか。それで、女は今どこに?」
「それは知らない。おいらは、その女が死んだように見せかけろって言われただけで…」
主に質問をしていくのは山上で、冬四郎たちは狢が逃げ出さないように、目を光らせている。
「その時の事、詳しく話せるか?分かる範囲でいい」
「その時?捕まって、一緒に鎖で繋がれてたんだ。けど、追っ手?誰か見付かったら困るのが近くまで来てるからって、女が死んだ事にしようってなったんだ。それで、女は服を脱がされて足を切られた。その血を服になすりつけて、藁人形に着せたんだ」
「それが、片車輪の気付いた血の臭いか…それで、お前は藁人形と一緒に部屋に連れてかれて、幻覚を俺たちに見せ続けてたってわけか」
「そうだ」
「狢、その女の様子は?」
「様子?元気はなかった…鎖で繋がれてたんだ。当たり前か。人間だけど優しかったかな?寒いからってくっついて寝て」
「他は?何か話した事とか」
「話?兄が4人も居るって言ってた。女は妖に関わる仕事をしてるって。あ、あと、簪を抜いてくれって頼まれた。これはお守りだけど、ここに置いていくって。お守りを捨てていいのかって聞いたら、女がよくはないけど必ず手元に戻ってくるから大丈夫って。おいらに、上手くやって逃げきりなって…そのあとで、女は毛布に包まれて運ばれていったから、あとは知らない」