4話
司法解剖が行われた大学病院に着くと、係りの者の案内も待たずに晃は歩き出した。先程、来たばかりだからか慣れた様子で地下に降りていく。だが、祐斗はびくびくとしていた。地下に行くと、ひんやりと冷たい風がどこからか、吹いているようだった。それにやはり、こういう場所は多い。急に目の前に立たれたりすると、ぶつからないと分かっていても、立ち止まってしまう。
そんな祐斗の視える力を分かっている西原は、わざと祐斗に合わせて最後尾をゆっくりと歩いていた。
「もしかしたら、むつも居るのかもな」
こっそりと西原が耳打ちすると、祐斗が困ったような顔をして頷いた。もし、地下の遺体安置所にむつが居たとしたら、話が出来るかもしれないと祐斗は思った。だが、この場に居るという事は思い残した気持ちが強すぎて、さ迷ってしまっているという事になる。むつの場合はさ迷わない方が、おかしいのかもしれないが、それはそれで悲しい事でしかない。そう思うからこそ、祐斗はこの場で、むつの霊などは視たくなかった。
警官が1人立っている安置室の前まで行くと、晃は胸ポケットから警察手帳を取り出して見せた。すると、警察は敬礼をしてドアの前からどくとドアを開けた。安置室に、ぞろぞろと男たちが入っていくのを警察は、やや不思議そうに見ていた。