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1話
「むつに何かあった事は確かだな。部屋は荒らされてたりしたか?」
「いえ…ですが、違和感はあります」
冬四郎はそう呟くと、部屋から出てドアを閉めた。警察を待っているのが、もどかしく思えたが、今あちこち触って何かしらの証拠を消してしまうような事をしてはいけないと自分に言い聞かせた。
「そうか…」
沈痛な面持ちの冬四郎を見て、山上もそれ以上は何も聞かなかった。颯介と片車輪もただ、黙っていた。
やがて、サイレンの音が聞こえてきた。警察がやってくると、冬四郎は身分を明かして手短に説明を行った。そして、室内に警察が入り証拠収集や写真を撮っている間、それらを睨むようにして見ていた。