4話
冬四郎の車に山上、京井、片車輪が晃の車に颯介、祐斗、西原が乗った。車は晃の物だが、西原と颯介が運転はしますと言った。だが、晃は運転を任せる事はなかった。
「湯野さんと西原君の運転がどうのじゃありませんよ?2人がどんな運転するのか知りませんから…ただ、疲れてるでしょう?湯野さんだって動き回ってくれてたんですし」
晃がそう言うと、後部座席に座っていた颯介と西原は顔を見合わせた。身体も大きく、肩書きだってしっかりしており、普段なら自分で運転せずに部下を使っても文句も言われないらずの晃の気遣いが意外な様だ。助手席の祐斗は、緊張した様子で背筋をぴんと伸ばして、前を向いている。
「そんな…宮前さんもお疲れなんじゃありませんか?妹さんの事でデータを送ってくれたりと無理をしてくださってますし」
「無理だなんて。こういう時に、権力は使う物ですよ…って、西原君と同じく公私混同ですけどね」
「警視正もむつさんの事、大好きですよね」
「も?…あぁ、西原君は確か…」
バックミラーを見ながら晃は、ふっと笑ってみせた。山上とは違う威圧感があるが、笑うととても優しげだった。
「今も昔もむつの事を大切にしてくれているんですね。兄としては嬉しく思う反面、はぁって感じですね。むつの男の趣味に…」
晃がそう言うと西原は、ははっと乾いた笑いを浮かべるだけで何も言い返さなかった。