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4話
冬四郎と西原が部屋に入っていくと、京井は立ち上がった。
「まだまだ、やる事はありますね…とりあえず、片車輪の手当てをしましょうか」
机の上にある救急箱を手に取り、京井は片車輪の隣に座ると腕を出させようとしたが、片車輪が先に救急箱を自分の方に引き寄せた。
「犬神さんが先や。傷口開いてんやろ?」
片車輪がとんっと胸の辺りをつつくと、京井は痛そうに呻いた。本当に痛かったのか、つつかれた辺りを押さえてうつ向いてしまった。
「あ、まじ?すまん、大丈夫か?」
「…先にお願いします」
大人しく京井はジャケットを脱いだ。巻いてあった包帯は、犬神の姿になった時に取れたのかすでになくなっていた。傷口は赤黒くなり、じわっと血が滲んでシャツがはりついている。そのシャツを脱ごうとすると、瘡蓋になった部分が剥がれてまた血が滲んできた。
「大怪我やな…湯野君、消毒液どこや?」
祐斗が先に袋に入っている消毒液を持ってきて、ガーゼに染み込ませるとこびりついた血と共に傷口を拭いた。よほどにしみるのか、京井はくっと歯をくいしばって耐えていた。