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4話
「湯野ちゃん、ちょっと祐斗頼む」
颯介は祐斗を山上から離して、椅子に座らせた。祐斗はまだ声もなく、泣いている。心配そうに山上は祐斗を見たが、晃を連れて奥の部屋に入っていった。
「コーヒー、甘くしていれ直そうか?」
「だ、大丈夫です…っ」
祐斗は何か思い出した事でもあるのか、またぼろっと涙を溢すと袖でぐいっと拭った。そしてミルクも砂糖も入っていない、黒い液体の入った紙コップに口をつけた。そんな無理してる様子を見て、冬四郎が立ち上がるとキッチンに入っていった。水の流れる音と冷蔵庫を開ける音が、かちゃかちゃと音がしていたが、それも聞こえなくなった。
お盆に5つの紙コップを乗せて戻ってくると、それぞれの前に置いた。黒い液体ではなく、薄茶色になった液体からは甘く優しい香りが立ち上っている。
「どんなもんか、分からないけど…今は甘い物の方がいいよね」
ずっとすすった冬四郎は、顔をしかめて甘すぎたかもと呟いた。祐斗もそっと口をつけると、そうですねと少しだけ笑った。