4話
むつが行方不明となって1週間。なぜ、1週間も経った今殺されたのか。殺されるまでに、むつに何があったのか。わざわざ自宅のベッドまで運んでの殺害なのか。疑問も調べる事も沢山あるはずだった。だが、冬四郎は動く気にはなれなかった。
はぁと知らず知らずのうちに、溜め息が多くなっていた。冬四郎はタバコでもと思って、ジャケットの内ポケットに手を入れたがタバコはなかった。そして、むつのマンションに向かっている途中で、山上に渡した事を思い出した。のろのろと立ち上がると、山上が座っていた所に置いてある自分のタバコを取ると火をつけた。はぁーと長い溜め息と共に煙を吐き出した。
ただ何もせずに、時間だけが経過していく。そんな時、廊下を早足にこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。一応、といった感じのノックと共にドアを開けて入ってきたのは晃だった。スーツを着てしっかりとネクタイを締めているが、どこか疲れきったような顔をしていた。何を言ったらいいのか分からないように立ち尽くしている晃に気付き、山上が振り返ると腰を折り、深々と頭を下げた。
「や、山上さん…どういう事ですか?いったい、何で…何でむつが…」
「宮前警視正…申し訳ありません。わたしの力不足で、妹さんがあのような形になってしまいました」
深々と頭を下げ謝る山上に、晃は驚いたようだったが、すぐに落ち着き山上の側に寄ると頭を上げさせた。