4話
泣いている祐斗と寄り添うにいる山上の後ろ姿を冬四郎は、ぼんやりと見ていた。見ていたというよりも、ただ目に写っているだけだった。冬四郎は素直に泣ける事を少し羨ましく、そして妹の為に泣いてくれる祐斗を好ましく思っていた。むつが遺体で発見されたたというのに、冬四郎にはその実感があまりなかった。確かに自分の目で見ていたはずなのに。
ベッドに寝かされ、白い首から流れている真っ赤な血と青ざめた顔。二度と開かれる事なく閉じられた目元にうっすらと開いていた唇。駆け付けた冬四郎が抱き起こし、揺さぶるとかくかくと力なく首が揺れていた。そして、ゆっくりと冷たくなっていった。
死因は失血死というのが警察の見方だった。冬四郎もそうだと思っていた。致命傷は首を深々と切られた傷だろうが、手首もぱっくりと切れ、血が流れていた。だが手首の傷の方が先だったようで、乾いて固まった血がこびりついていたし、手首からの出血はほとんど無かった。おそらく、この手首の傷からの臭いに京井と片車輪は気付いたのだろう。
手首を切り、血を流させた状態で倉庫から自宅マンションまで運び首を切った。それが、冬四郎たちの考えだったがそれは警察には話していない。発見に至った経緯は、何か手掛かりがないかと部屋に来てたまたま見付けたという事にしておいた。