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4話
「ほれみろ…寒いんだろ?」
酒焼けのような少ししゃがれた声が、優しく聞こえた。寒くて鼻をすすってるわけではない事を分かっていて、そう言う山上の声に祐斗は、ぎこちなく頷いてみせた。だが、頭を動かしたせいかぼろっと目元から大粒の水が落ちていった。祐斗が袖で、ごしごしと目元をふいているのを山上は柔らかな表情で見守っていた。
「…寒いし、寂しいよな」
ぼそっと呟いた山上の語尾が少し震えていたように聞こえ、祐斗は顔を上げた。祐斗のように、涙こそ流してはいないが、その目は赤く潤んでいた。
祐斗の食い縛った歯の隙間から、くうっと声が漏れた。それと同時に堪えきれなくなったのか、ぼろぼろと両目から涙が溢れて落ちていく。山上はそんな祐斗の頭を撫で、肩に手を回して引き寄せた。山上に寄り掛かるようにして、祐斗は泣いていた。
「泣けないやつの分も泣いてやれ」
ぽんぽんと肩を叩かれ、祐斗は返事も出来ずに、何度も頷いた。