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4話
山上が溜め息と共に煙を吐き出して、灰皿にぎゅっとタバコを押し付けた。だが、落ち着かないのかすぐに次のタバコに火をつけた。事務所内が煙くなってくると、祐斗がそっと立ち上がると窓を開けた。ひんやりとした風が、吹き込んできてこのまま重苦しい雰囲気までも変えてくれたらと願ったが、そう都合よくはならない。寒くなるからと少しだけのつもりだったが、全開にすると祐斗は窓枠に肘をついて頬杖をついた。
「…寒いぞ」
「気のせいです」
ぼそぼそと山上が言ったが、祐斗は全く気にしない様子で素っ気なく言った。椅子をきしませて山上は立ち上がると、祐斗の隣に立った。
「お前、学校」
「行く気ありません」
「…そうだな」
タバコを口にくわえた山上は、よしよしと祐斗の頭を撫でていた。ごつごつした手のわりに、優しい撫で方に祐斗はうつ向いて唇を噛み締めた。ぐっと我慢をしていたが、目にはみるみるうちに涙が溜まってきた。祐斗は鼻をすすって、はぁと湿っぽい溜め息をついた。そして、またずっと鼻をすすった。