4話
冬四郎たちもやってきて、その後ですぐに警察に通報をし、写真を撮ったり指紋の採取をしたりと色々な事が済んだ頃には、すでに明るくなりまばらながらに人通りのある時間になっていた。
重い足取りで事務所に戻ってきたものの、冬四郎は一言も口をきかずにうつ向いて座っていた。鑑識たちの手で、担架に乗せられビニールをかけられたむつが運ばれていくのも、無言で見ていた。ただ、司法解剖をとの話が出た時にだけは担当する刑事の胸ぐらを掴んで、くってかかったが山上と颯介に止められ、そこからはもうぼんやりとした目で立ち尽くしていた。
事務所に戻り、重苦しい雰囲気の中、祐斗がコーヒーをいれてそれぞれの前に置いていった。日が差してきたが、冷え込む朝だった。
冬四郎の落胆も酷いが、1番最初にその現場を見た京井のショックも大きかったのだろう。今はもう落ち着いているようだが、やはり口をきかない。間に合わなかったのは、自身のせいだと思っているのか、むつの部屋にやってきた冬四郎には何度となく謝り、頭を下げていた。
誰も口を開こうとはせず、聞こえてくるのはコーヒーをすする音と山上がタバコに火をつけた時のライターの音。あと聞こえてくるのは、外からの人の声に車の音なんかだった。