3話
ドアを大きく開けて、中に入ろうとすると京井が足を踏み出すとびゅんっと何かが飛んできた。京井はとっさに避けたが、見えていなかった片車輪はそれにもろに当たった。
「ぬ、うぉ…って何やねんな‼」
ばさっという音とどすんっという音に京井が振り向くと、投網にかかった片車輪がバランスを崩したのか尻餅をついていた。人が居たような気配はなかったはずだがと、京井が真っ暗な室内に目を向けると、何かが光った。間髪いれずに、その光った物が片車輪目掛けて真っ直ぐに飛んでくると京井が、手で弾いた。だが、すぐに2発目がありそれは片車輪の腕をかすめると壁に突き刺さった。
「まじかよ…」
びいぃぃんっと揺れ、壁に突き刺さったナイフを見て片車輪は目を見開いていた。流石に京井も驚いており、動けなかったが室内から硝子の割れる音がすると、我に返ったように室内に飛び込んでいった。
むつの寝室のドアが開いており、そこから風が吹いている。京井が入ると、割れた窓から風が吹き込み、カーテンが揺れていた。その風に流されてくるように、強く血の臭いを感じた。嫌な予感と見たくない気持ちが強いが、好奇心が勝ったのか臭いのする方に、そろそろと視線を向けた。
「……っ‼」
京井は声もなく、臭いのする方を凝視していた。目を反らしたくても、こそから目を離せない。開けっぱなしの玄関から、片車輪の声と冬四郎たちが来たのだろうか、車の止まる音が聞こえていた。