3話
息が切れてくると、冬四郎は舌打ちをして立ち止まった。山上と後からぜぇぜぇと完全に息の上がった祐斗が追い付いてきた。
「見失いましたね…というより、最初から見えてませんでしたけど」
「あぁ…どいつもこいつも勝手に動きやがって。こっちは、そんなに走れねぇつーのに」
「たぶん、片車輪と京井さんと一緒に湯野さんが走れるとは思えないんで…湯野さんだけ戻ってくると思いますし…一旦倉庫の前まで戻りますか?」
「そうするか…」
置いてかれた3人は、走ってきた道を戻るようにして、ゆっくりと歩き出したが、足音が聞こえてくると素早く振り返った。
「宮前さん‼行きますよ‼祐斗君、携帯貸して‼」
噂をすれば何とやらなのか、走ってきたのは颯介だった。颯介はどこに行こうと言うとか、3人に声を掛けると背を向けて、また走り出した。何が何だか分からないままに、名前を呼ばれた冬四郎は走り出した。
「またかよ…」
また走るのかと、げんなりとした様子の山上だったが、祐斗を促して2人を追うように走り出した。
あっという間に颯介に追い付いた冬四郎は、どういう事なのかを聞いているようだった。ちらっと後方を見た冬四郎は、こくりと頷いた。