142/542
3話
3人が床の血痕を辿って歩き出すと、ばんっと大きな音が響いた。びくんっと肩を震わせ、立ち止まり辺りを警戒した。
「犬神さん‼血や‼ねぇちゃんの匂いや‼」
片車輪の大声が倉庫内に響いた。はっとした京井は、木枠の間を走り抜けて行く。冬四郎と山上もその後に続いたが足音は聞こえども、京井の後ろ姿をとらえる事は出来ない。そうして走っているうちにも、開いているドアが見えてきた。
「社長‼湯野さんが‼」
「湯野ちゃんがどうした‼」
「京井さんと片車輪を追い掛けて行っちゃいました‼」
ドアの前に取り残された祐斗が、慌てている。
「何があった‼」
「片車輪が、むつさんの血の匂いがって行っちゃって、その後に湯野さんと京井さんが」
「分かった‼どっちにいった!?」
山上は走りながら怒鳴るように言うと、祐斗が3人が走っていった方を指差した。倉庫から出た、冬四郎と山上は祐斗が指差した方向にそのまま走り出した。置いていかれないようにと、祐斗もあとから懸命についてくる。だが、すでに京井の姿も颯介の姿もどこにも見えない。