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3話
冬四郎は、ペンライトの光にちかっと反射した物に見覚えがあり、いても立ってもいれなくなったのだ。それを拾いあげ、ペンライトでかざすと飾りのついた簪だった。そして、簪を拾った辺りをペンライトで照らすと、毛布や空になったペットボトル、それにキャンプなんかで使う小さなコンロが転がっていた。
「みや、お前…急に…」
冬四郎が何を見ているのか気付いた山上は、言葉を切るとペンライトで念入りに辺りを照らした。京井は毛布を拾うと、ふんふんと臭いを嗅いだ。
「遅かったみたいです…宮前さん?」
「これ」
山上に拾った簪を差し出すと、受け取った山上はペンライトで照らしながら確認した。
「むつのだな…最近、三つ編みしないで、アップスタイルにしてよくつけてたから覚えてる」
簪を冬四郎に返すと、山上はしゃがみこんでコンロを触った。ひんやりと冷たかった。京井もしゃがみこむと、コンクリートの床を指で擦った。
「ここ、見てください。血です…むぅちゃんの物だと思います」
床に点々とついている、小さな赤い染みを見付けると顔をしかめた。またここでも、血が出るような事があったのだろう。