140/542
3話
倉庫の中では、冬四郎が先に立って歩き、木枠が積み上がっている間を通るにも注意深く、視線を向けていた。
こつ、こつ、と3人の足音はするが他の音は倉庫内からは聞こえてこない。本当にむつが居るのかと、冬四郎は不安に思ってきていた。
「宮前さん、右に行って貰っても良いですか?」
京井から言われると、冬四郎は頷き、ペンライトで照らしながら木枠の間を右に曲がった。木枠もしばらく使われていないのか、うっすらとカビ臭い。それに隙間風があるのか、かなり寒かった。
「あ…」
「あ、おい」
何かを見付けたのか、冬四郎は小走りにそこへと向かっていった。周りに注意を払わずに、向かっていく冬四郎を山上は止めようと腕を伸ばしたが、その前に冬四郎はするっと抜けて行ってしまった。山上はちらちらと振り向き、京井を気にしつつも冬四郎も気になるようだった。
「大丈夫ですよ、行きましょう」
京井が先に冬四郎を追うように、走り出すと山上は仕方なさそうに走り出した。