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1話
冬四郎は頷いた。そして、さっと立ち上がった。颯介と山上は、冬四郎を見上げた。
「とりあえず、むつの部屋に向かいましょうか。どのみち、行くつもりで居たんですよね?なら、先に安否の確認をすれば…」
「やっぱり、そう思うか?」
「えぇ。よほどに体調が悪いのかもしれませんからね…」
落ち着いているようで、心配で居てもたってもいられない冬四郎は、すでにコートを羽織ってドアの方に向かっている。颯介と山上も上着を着ると、片車輪を連れてドアの鍵だけを閉めると冬四郎を追っていった。
車で来ていた冬四郎は運転席に乗り込むと、すぐにエンジンをかけた。そして、全員が乗り込むとシートベルトをつけ終わるのも待たずに発進させた。
「みや、呼びつけといて何だけど…お前仕事は?」
「日勤なので大丈夫です」
助手席の山上の顔も見ずに、冬四郎は答えると込み合う道を避けるようにして、細い道を選んでいく。