138/542
3話
山上が片車輪に指示をするように、倉庫を指差した。すると、片車輪は颯介と祐斗と共に、遠回りをして倉庫の裏側に回っていった。
「居ると、思うか?」
「それは何とも…」
京井が言うと、山上はそうだなと頷いた。そして、冬四郎と共に足音を立てないように、倉庫のドアの前まで行くと息を殺すようにして、壁に耳を押し付けた。中からは何の音もしない。聞こえるのは、びゅーびゅーと鳴る海風だけだった。
耳をすませている京井でさえ、何も聞こえないのか首を振った。だが、中を確認してみないと分からない。京井は、そっとドアノブに手をかけた。山上はポケットから出したペンライトを冬四郎にも渡した。かちっとつけて下に向けた。そして、京井に向かって頷いてみせた。
躊躇う事もなく、京井はすぐにドアを開けた。ばんっと音をたてて開いたドアから、山上がペンライトを照らしながら中に入った。続けて冬四郎も入ると、ペンライトで倉庫の中を照らした。