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3話
「やっぱり…」
「臭いがしないんやな?」
「えぇ」
京井は険しい表情を浮かべていた。だが、臭いを感じた所までは分かっているのか、迷う事もなく真っ直ぐに歩いていく。
祐斗と山上は物珍しそうに、辺りを見回している。倉庫街と言っても街灯も少なく大きなコンテナのような倉庫が、並んでいるだけの寂しい場所だった。
「むつさん海好きですけど、好きな海ってこんなんじゃないですよね」
祐斗が言うと、颯介がそうだねと呟いた。
夜だからなのか人気のなさを見ると、監禁しておくには絶好の場所と言えるのかもしれない。それに、ここなら大通りからも遠く大声を出そうと暴れて大きな音が出ようとも、人に知られずに済みそうだった。
「こんな所にずっと居たら風邪引きそうだね」
「そうですよね…かなり寒いですね」
海風が常に吹いているからか、体感温度はぐっと下がっているような気がする。祐斗は寒さに、ぶるっと身体を震わせた。