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3話
京井の話していた倉庫街が近付いてくると、冬四郎は1度車を止めた。後続の颯介も止めるのを見ると、携帯を持って降りて行った。携帯を見ながら、颯介と二言三言話すと戻ってきた。
「この先だと近すぎるので、少し戻った所の駐車場に止めます。少し歩く事になりますが…大丈夫ですか?」
冬四郎は振り向いて、京井に声をかけた。京井はこくりと頷いた。それを確認すると、冬四郎はUターンさせると駐車場に車を止めた。降りるとすでに、潮の香りがしており、海が近いのがよく分かる。だが、まだ倉庫などは近くに見えない。
「向こうですね」
京井が先に立って歩き出すと、冬四郎たちもそれに続いた。歩いたりして揺れると、傷口が痛むようで寒いのに、京井はすでにうっすらと汗をかいている。だが、それは暑くて出るような汗ではなく冷や汗なのを皆は承知していた。だから、片車輪が肩を貸そうとしたが京井は無理矢理に笑みを浮かべてやんわりと断った。