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3話
冬四郎の車に山上と京井の乗り、颯介の運転する会社の車に祐斗と片車輪が乗った。妖をそれぞれの車に分けたのは、狙われたとしてもどちからだけは無事に逃げ切れるのではないかと、山上が言ったからだった。
「どっかで車止めないと…近付きすぎない方が良いですよね」
「そうだな…お前、へまするなよ?」
ハンドルを握りながら、冬四郎は少しむっとしたような顔をした。山上は、むつを見付けられるかもと、期待をしすぎて慌てるなよと冬四郎に言いたいようだ。後部座席でそれを聞いていた京井が、くすっと笑っていた。
「京井さんは無理しないように」
「あ、はい…けど、ここで少し無理すればむぅちゃんが戻ってきてくれるかもしれませんから」
「みんな、むつ大好きだよな」
山上が呟くと、冬四郎と京井は何とも言えず困ったように笑った。