1話
冬四郎は、ソファーに深く座ると腕を組んだ。何故むつの事でと呼び出されたのか、何故この場に片車輪が居るのか、全く分からない。慌てて出てきたが、ここは落ち着いて1つ1つを聞いていくしかないと思ったのだろう。冬四郎が落ち着いてきたと山上も思ったのか、コーヒーをすするとタバコに火をつけた。
「…まず、山上さんの話から聞かせて貰えますか?片車輪のは、あとでも良い気がします」
「そうだな。むつがさ、アポ取っててそれを…ましてや、相手が人間じゃないってなれば、あいつ俺たちに言わなくても、片車輪には連絡すると思わないか?」
「確かにそうですね。山上さんも湯野さんも、むつから片車輪が来ることは?」
「聞いてない。それは別にいいんだ。むつが対応するつもりで、呼んでたんだろうからな。俺が気になるのは、湯野ちゃんのパソコンに返信出来て、片車輪には一言も言ってない所だ」
冬四郎は組んでいた手で、あごを撫でながらちらっと颯介を見た。
「昨日、メールをパソコンから送ったんですよ。本来、出勤日でしたが来なかったので、疲れて起きれないのだと思ったので、公休扱いにしとくという内容を。そしたら、今日になって体調不良の為しばらくお休みします、って返信がありました」
「それは、俺も見てるから本当だ。俺がそう言っといてやれって言ったからな。な?短文でも返信出来るなら片車輪にも手短な文章打てるはずだろ?」
「そうですね…むつにしてはおかしいですね。ましてや、片車輪がここに来るって事は人目に触れるって事ですから、自分が居ない事を伝えないはずがないと思います」
「だろ?ってなると…むつに何かあったんじゃないかって思うのも不自然じゃないだろ?」