3話
「けど、よく戻れたもんやな」
「えぇ、途中で気を失ったりしてましたが…何とか。とにかく、分かった事があったのでそれをと」
「分かった事?」
他にも何かあるのかと、山上と冬四郎は興奮を隠しきれない様子だった。
「その倉庫のどこかに、むぅちゃん居ますよ。香水の香りがありましたし…」
京井がそう言うと、颯介が倉庫に入っていった。そしてファイルを持ってくると、中から何枚もの紙を取り出して床に広げた。颯介が何をしようとしているのか分かった山上は、冬四郎を促して京井と颯介の側に行った。
「どの辺の倉庫か分かりますか?この海の辺りは、倉庫街になっていて広いんです…ここが、事務所のある辺りです」
颯介は言うと、大まかな地図の上から海の辺りを指で円を描くようになぞった。そして、さらに詳細な地図をその上に置いて、指差した。京井はこくりと頷いた。京井は目を細めるようにして、地図を見ていく。颯介はその視線を辿りながら、指を動かした。
「大まかにはその辺です。けど似た倉庫ばかりですから…」
「しらみ潰しに行くか?」
「私が行きます。臭いが残っていれば良いですが…海風で消されてる可能性が高いですが」
山上は、きゅっと目を細めた。深傷をおっている京井を動かすのは、躊躇われるが居てくれた事に越した事はない。
「なら、少しでも休んでてくれ」
反対されなかった事に安心したのか、京井は頷くと静かに頭を下げると、目を閉じた。