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3話
「起こしたかいな?」
「いえ、大丈夫です。それより話を」
焼いた傷口からはまだ少し血が滲んでいるのか、巻いたばかりの包帯がほんのりと赤く染まっていた。
「あぁ…犬神さんが怪我したって事は、そっちが当たりやったんやな?」
「おそらく…は。ですが途中で臭いが無くなりましたけど。川が流れていたので、そこにナイフや血の付いた服を捨てたんじゃないかと思います。けど、相手の臭いはあったので追ったら、この様ですよ」
くっと自嘲気味に京井は笑った。
「詳しく、話せるか?」
山上が気遣わしげに言うと、京井は前足を伸ばすようにして座り直すと頷いた。
「追っていくうちに、海の方に出たんです。倉庫が並んでる所です…あちこち、ぐるぐる回って行かれたので追って行ったら、覆面の者たちに囲まれましてね」
「…たち?そんなに大人数だったのか?」
「えぇ、何人か把握は出来ませんでしたが。それでまた襲われて、この怪我でして…人の姿で居られなかったので、人目を避けながら戻ってきたという、情けない有り様ですよ」