3話
「それで、夜に何があったんですか?」
コーヒーの入った紙コップをそれぞれの前に並べながら、祐斗が聞くと山上と冬四郎は顔を見合わせた。
「昨日な、襲撃された。以上」
「以上じゃないですよね?片車輪と京井さんは何をしてたんですか?事務所の床には血溜まりが出来てましたし」
やんわりとだが、誤魔化すなという颯介の言いように、山上はぼりぼりと頭をかいた。
「襲撃されたのは、おそらく片車輪がここにいたからです。ここに居るアピールをして、誘き出そうと思いまして…私が指示をしましたから」
冬四郎が、ばつが悪そうに言うと颯介は溜め息をついた。怒っているのではなく、呆れている様子だった。
「こそこそ、何かするとは思ってましたが…そうですか。それで?」
「それで、襲撃してきたのは覆面をした2人組でして、その有り様に」
「事務所がこうなったのは、社長から朝少し聞いてます。それで?」
颯介はあくまでも誤魔化さず、全てを聞こうとしている。普段の物腰の柔らかい雰囲気なままに、こうも追求をされると返ってそれが怖い。
「湯野君、そう責めんとってくれや。お兄ちゃんは、ショックがでかいんや」
口を挟むまいと黙っていた片車輪だったが、冬四郎が哀れに思えたのか助け船を出した。そして、自分が話すからと言った。