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3話
まとわせたと言っても、車輪の部分に当たる下半身にだけだった。片車輪はその炎をすくいあげると、京井の傷口に押し付けた。じゅっと煙が上がり、焦げ臭い臭いがあっという間に室内に充満した。京井のぐるるるっという唸り声が、低く響いていた。片車輪はもう1度、炎をすくいあげると押し付けた。がるるるっと京井の物凄い唸り声がしたが、それもだんだんと小さくなっていった。
冬四郎にも颯介、祐斗も煙が邪魔をしてどうなったのか分からなかった。冬四郎は、そろそろと立ち上がると手探りで窓を見つけると開けた。煙が外に流れていき、ようやく視界が確保されてきた。
「出来たで…犬神さん?生きてるか?」
片車輪はすでに炎を消して、大きな手で京井の頭をぽんぽんと叩いた。京井は鼻先にシワを少し寄せて、ふーっふーっと唸っている。
「堪忍な…」
京井の威圧感に負けたのか、片車輪が苦笑いを浮かべて、そろそろと後ろに下がっていった。京井はぜぇぜぇと息をしながら、少しだけ頷くような仕草をして見せた。