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3話
管狐が懸命に毛布の入っている袋を引きずっていると、がちゃっとドアが開いた。びくっとした管狐が振り返ると、シワのよったシャツを着た冬四郎が不思議そうに管狐を見ていた。
「………?」
あまり颯介と仲良くないせいか、管狐ともあまり仲良くない冬四郎だったが、首を傾げながら、ひょいっと毛布の入った袋を掴んだ。
「運ぶのか?どこに?」
管狐は冬四郎と毛布を交互に見た。
「小さい身体して手伝いか?偉いな」
前に噛まれた事など忘れているのか、冬四郎は優しげな笑みを浮かべて、管狐の小さな頭を指先で撫でてやった。管狐は嫌がる素振りもなく、撫でられていたがするっとその指から離れると机の上を歩き出し、振り返った。ついてこいと言われているのだと思った冬四郎は、毛布を掴んだまま管狐の後をついて、奥に入っていった。
「お…何だ?何があったんですか?」
大きな身体の犬神が、ぐったりと倒れ祐斗に膝枕をして貰っているのを見て、冬四郎はすぐに何かあったんだと表情を引き締めた。