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3話
片車輪は、ちらっと颯介と祐斗に目配せした。今から抜くとも何も言わずに躊躇いもなく、一気に引き抜いた。京井が痛みに、大きな身体を反らせるようにしたが祐斗が、何とか押さえ付けていた。傷口から、ぴゅっと血が飛びどくどくと流れてくるのを颯介がタオルを何枚も重ねて、ぎゅっと押さえた。京井は、はぁと息をつきながら身体の力を抜いていった。
「それ…」
からんっと片車輪の手から落ちたのは、大型のナイフだった。刃の部分は真っ赤に濡れて、ぽたぽたと滴が落ちていた。刃先には、釣り針のように返しがついていて、引き抜く時にえぐったのかところどころ肉片がついていた。
「…大丈夫かいな?」
「本当、一気にして頂いて…助かりましたよ」
祐斗は膝の上に頭を乗せたまま、目も開けずにぐったりとしている京井は、皮肉のように言った。
「せやろ?わしで良かったやろ?湯野君らじゃ力負けしてたで…返しがついてたんやしな」
床の上に投げ出してあるナイフをちらっと見た片車輪は、はぁと大きく溜め息をついた。