3話
「…少しやないな。人の姿で居られへんくらいやもんな。見してみ?」
片車輪は膝をついて座った。犬神の姿に戻っている京井の、前足の付け根あたりからは、とろとろと真っ赤な血が流れていた。颯介は、タオルで出血している辺りをぎゅっと押さえている。颯介の手をどかしてみると、前足の付け根の少し上に刺さっている物があった。
「あいつらのんか?」
「えぇ、自力では抜けなくてですね。すみませんが、ぬいて貰えますか?」
「えぇけど…谷代君が戻るのを待った方がえぇやろ。これじゃ抜いたら出血酷なんで。湯野君、社長に連絡しい。あとは、わしがやる」
血を含んで重たくなったタオルを持って、颯介は立ち上がると携帯を取り出して山上にかけ始めた。その間にも、颯介はキッチンから洗濯してあるタオルを何枚も持ってくると片車輪に渡した。
「動かれへんって事はただの傷やないな」
「そうですね…妖が襲われてるって言ってましたね?何か分かりましたよ…ただの人間ではないと思います」
「…あんまし喋るなや。傷に響くで」
そう言いながら片車輪は、刺さっている物の回りを囲むようにして清潔なタオルを巻いた。少し力が入りすぎたのか、京井がぐっと呻いた。
「相当の傷やな」