3話
「はぁー満腹です」
腹をさすりながら、満足げな笑みを浮かべる祐斗を見て、颯介と片車輪はくすっと笑っていた。そして、弁当の空容器をまとめてごみ袋につめこんだ。食後にいれ直したコーヒーをすすっていると、颯介にもあっ、と言った。
「乾燥機に毛布入れっぱなしだ」
「あ、そうでしたね。俺、行ってきますよ」
「ほんなら、わしも行くわ」
祐斗が携帯をジーンズの尻ポケットに突っ込み立ち上がると、片車輪も立ち上がった。
「ほんと…優しいなぁ」
「うっさいわ。行くぞ」
「はいはい、じゃあ。行ってきます」
颯介は仲良く出ていく2人を見送った。むつといい祐斗といい、妖だろうとなかろうと分け隔てなく接するよなと微笑ましく思っていた。だからこそ、それが仇とならない事を、颯介は心配にもなっていた。そんな颯介の心配を知らず、祐斗は片車輪と共にエレベータに乗り込んだ。
「なぁ毛布って何や?」
「また泊まるなら必要だろ?毛布。硝子とかタバコの灰で汚いから、洗濯しに行ったんだよ」
「あぁ…それは…何かすまんかったな」
「お前、本当に良いやつだな」
祐斗が本心からにっこりと笑いながら言うと、片車輪は大きく目を見開いていた。そして、あとから恥ずかしそうに顔を背けた。