3話
「あれ?」
両手に買い物袋を持って、事務所の前まで行くと壁に寄り掛かっている大柄な男に祐斗は気が付いた。颯介も気付いたようで、おや?というような顔をしていた。
「あ、良かった…誰も居らへんようやったか、どないしようかと思ってたんや。連絡先も、おねぇちゃんのしか知らんからな」
「片車輪だけ?」
「とりあえず、わしだけや…買い物帰りか?」
颯介が鍵を取り出すのに、買い物袋を下に置こうとすると、片車輪がひょいと持った。そんな以外な気遣いに、颯介は少し変な心地になっていた。
「えぇ、まぁ色々と。さ、どうぞ」
片車輪は室内に入ると、あぁと溜め息貼られた漏らした。昨日の夜に、ここで少しだったが暴れた片車輪は、申し訳なさそうな顔をした。
「片付け…わしもするでな」
「は?どうした?え?」
「いやいや、わしが居らんかったら…襲撃もなかったかもしれんやろ?わしも一因やしな。ねぇちゃんが拐われたんも…な」
1度、仕留め損ねた片車輪をまた襲いに来たのかどうかは、はっきりしなくとも自身が居たせい、むつが拐われたのも相談をしようとした自分のせいだと片車輪は思っているようだ。
そんな気落ちしている片車輪に気付いた颯介と祐斗は、顔を見合わせた。
「気にする事じゃないって‼」
祐斗が明るく言い、盛り上がった筋肉のついている広い背中を、ばしばしと思いきり叩いた。
「事務所は片付けたら良いし、むっちゃんは見付け出したら良い。気にしてるなら、しっかり協力しろよ」
颯介もしれっとそう言うと、ドアを閉めて買い物袋を机に置いた。