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3話
ようやくやってきたドア修理の業者は、事務所内を見て、ぽかんと口を開けていた。何も知らなければ、その反応が普通だよなと思いつつ、颯介も祐斗もあえて何も言わなかった。聞かれたとしても、むしゃくしゃして山上が暴れたとでも言えばいいと思っていた。ドアの修理は意外と早く終わった。金具からドアを外して、真新しいドアを取り付けただけで30分程度だった。新しくなった鍵を受け取り、その場で支払いをして領収書を貰った。
「経費のだから…またこんな事になっても無事な場所に置いておかないと…」
颯介はそう呟いて、領収書を倉庫のロッカーの中にしまった。果たして、そこなら被害が出ないのかは、2人にも分からなかった。
「さて、鍵も作らないとだし、買い出しに行こうか?祐斗君、毛布1回洗いたいしまとめて袋につめてくれる?」
「はーい」
言われた祐斗はゴミ袋に、丸めた毛布を突っ込んだ。どう見ても、洗濯しに行くようには見えなかったが、他にどうしもようないので、仕方がない。
真新しくなったドアを閉めて、鍵をかけると2人はゴミ袋に入った毛布を持ってエレベータに乗り込んだ。