3話
床に落ちた物を拾い、テーブルや机の上に置いてから大きな硝子の破片を拾い上げ、掃除機をかけた。
「社長、ビール呑んだんすね」
缶を拾い、ゴミ袋に入れながら祐斗は苦笑いを浮かべた。あちこちに、吸い殻も落ちているし、めちゃくちゃになってるなら汚れてもいいという、開き直りがあった事は、祐斗でも容易に想像がついた。
「みたいだね」
キッチンから雑巾を取ってきた颯介は、祐斗が掃除機をかけ終えると床に膝をついて、こびりついた血をごしごしと擦った。
「とりあえずは、こっちの奥半分だけ終わらせたら言いかな?会社としてはしばらく休業だって、社長も言ってたし」
「あ、そうなんすか?なら、そんなに片付けなくても大丈夫なんじゃないですか?」
「うん、むっちゃんが見付かるまではね。けど、社長も寝たら戻ってくるみたいだし…また誰か泊まるかもしれないからね。あ、コインランドリーも行かないと」
「そういう事ですか。なら、ついでに少し買い出しとか行っておきますか?」
「そうだね。コーヒーもなくなりそうだし、紙コップも必要そうだし…ドアの修理来たら。行こうか」
祐斗は頷くと、折れて倒れているパーテーションを片付けるべく、どうにか真っ直ぐにして、畳んでいった。