第1話 転生準備
とりあえず不定期連載の予定です。
2017/12/05 読みにくい箇所を修正しました。
「ここは……」
気がつくと真っ白な空間にいた。
その空間は見渡す限り真っ白で、あの少女、ミルクはいないようだ。
「あっちで会いましょうって言ってたけど、いないのかよ」
「起きた?」
「うお?!」
耳元で声がして、思わず変な声をあげてしまう。
「ごめんね。エーリのダメージがひどかったから、いつ起きるかわかんなくて。驚かすつもりはなかったんだけど」
「いや、いい。俺はそんなに寝てたのか?」
「うん、地球時間でいうと5年くらいかな」
そりゃ随分と寝坊したもんだ。
「大分寝てたみたいだな。これがお前の、ミルクの世界なのか?」
「んーん。違うよ。ここは休憩所みたいなとこかな。私の世界はちゃんとあるから安心して。ダメージ抜くためと、転生先の相談とか、どんな風になりたいかエーリに希望も聞いておこうと思って」
どうやらまだ転生してないらしい。モラトリアムみたいなものか。
希望も聞いてもらえるならありがたいな。
「あ、その前にお勉強してからだね」
「勉強?」
「そう。私の世界【アミルヴェルデ】の」
【アミルヴェルデ】。それが異世界の名前か。
「まあ全てを伝えるとすんごい時間かかっちゃうから、大雑把な知識を渡すね。えい!」
「?!」
ミルクの指が額に触れると、知識が自分の頭に流れてくるのがわかる。
…。なるほど。大きさは地球の約10倍か。生物の数も、えーと、ゼロが多すぎてわからん。まあいっぱいいる、と。
種族?ああ、人間以外にも意思疎通ができる奴らが多いんだな。ここら辺は凄く異世界っぽい。
魔法があるが、その代わり科学がない。魔法が代替しているイメージかな。
人間族は、王制か。独裁者多そうだなー。他には……。
その他ざっくりした知識を手に入れて、俺の胸は期待でいっぱいになった。
「どう? 楽しそうでしょ!」
「ああ、今から楽しみだ」
「えへへ。じゃあ次は転生した時のあれこれを決めよっか」
「さっき言ってたやつか。あれこれとは具体的に何を決めるんだ?」
「どの種族に転生するとか、性別とか、魔力の有無とか、どんな才能を持たすか、とか」
どうやらキャラメイクのようなことが行えるらしい。
だが、ちょっと気になることを言ってるな。
「魔力の有無って、ない奴もいるのか?」
「いるよ。ほとんどの生物には、魔力を生成する器官が備わってるの。その性能には差があるけどね。でもごく稀に、魔力生成器官がない子達も生まれてくるのよ」
「魔力がないと困るのか?」
「そうね。この世界は生活に魔力を使うことが多いから、ないと火を起こすのも苦労したりするし。あんまりいないから、人のなり損ないって意味で『亜人』と呼んで差別する人達もいるわね」
この世界も差別があるのか。胸いっぱいに詰まった期待が、少し萎む話だな。
「差別するのは一握りよ。それに、魔力がない子達は身体と心が凄く丈夫なの。努力家が多くて、魔力じゃなく技術を磨くから、武芸、工芸、美術の分野で第一線にいる人には、魔力を持っていない子達も多いんだよ」
「そうか。安心したよ」
よし、気になってたことも解消されたし、色々決めていこう。
……とりあえずこんな感じか。
【種族】: 人間
【性別】: 男
【魔力】: 有り
【才能】: お任せ
種族。竜とか獣人とか気になったものもあったが、身体や文化の違いに戸惑って楽しめないかも、と思って結局人間にした。
性別。この状態で女をやっても、中身オッさんがキャッキャウフフできるわけないし男でいい。
魔力。せっかくの異世界なんだから、魔法は使いたい。
才能。選べるものがいっぱいありすぎて、選ぶのがめんどくさくなったのが本音。
「あんまり変わらないけど、これでいい?」
ミルクが片眉を上げて見上げてくる。
「ああ、大丈夫だ。転生って言うからには、赤ちゃんからやり直しなんだよな?」
「そうだよ。大人になるまではちょっと苦労すると思うけどね」
そう言うミルクの顔は、少し赤かった。どう言うことだ?
「えーと、赤ちゃんてことは全部丸出しだし、おしっこもうんちもオムツにしなきゃいけないよ?それに離乳食が始まるまで食事は、その……おっぱいだし」
「ああ、なるほど」
33歳からの赤ちゃんプレイか。
前世ノーマルだった俺には大分ハードルが高いな。
……ふう。
「私が思考読めるの忘れた?」
気がつくとミルクの顔が目の前にあった。ものすごいジト目でこちらをみている。
「いや、確かに前世はノーマルだったけど、合法的に出来るならいいかなー、なんて」
「幼少期は性的な興奮を起こさないようにします!」
えーーーーーーー。
「文句ある!?」
「ない、です」
「よろしい」
こうして、一部希望は通らなかったが、俺の転生準備は終わった。
「そろそろいい?」
両手を前に出し、ミルクが聞いてくる。
その手はすでに光っており、俺の足元には金色の魔法陣が浮かび上がっていた。
「ああ、世話になったな」
「またすぐ会えるから、今生の別れみたいに思わないでよ?」
「これから生まれるのに今生はないだろ」
「ははは! たしかに!」
「……じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃい。エーリの転生が、良いものになるよう祈ってるよ」
そう言ったミルクの全身から虹色の光が溢れ出し、呼応するように魔法陣の色も変化していった。
俺の身体が粒子となって、虹色の光と交わっていく。
そして、この世界【アミルヴェルデ】の俺、エーリが生まれた。




