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海へ(一)

 翌日、午前十時に駅前に待ち合わせという事で、僕は十分ほど早く到着し、紗千が来るのを待っていた。

 長袖のロングTシャツにジーパンといったラフな格好。そして、持ち物と言えば、何かあっても連絡が取りやすい様に携帯電話と財布をポケットに入れて持って来ただけだ。

 自転車漕いで海を目指す。小学生くらいならば夜も眠れないような大冒険かもしれないが、高校生にとってはこの格好がちょうど良いくらいのお出掛けだと僕は思ってたんだけど。

「おはよう」

 お昼前の駅前の喧騒をかき消すような気持ちの良い挨拶で現れた紗千の背負う荷物は少々大袈裟だった。

 服装自体は爽やかな空色の薄手のパーカーを白いカットソーの上に羽織り、下はスキニーのジーパンなのだが、背負うリュックには何が入っているのか、結構膨らんでいるように見えた。

 僕は当然それが気になり、

「どうしたの?」

 紗千が背負うリュックを指差して尋ねた。

 彼女は嬉しそうに笑いながら、

「冷たいお茶入れた水筒とか途中で食べるお弁当とか持って来たの。手提げとかでも良かったんだけど、真吾の運転に多少の不安があったからね?安全性を考えてリュックにしたの」

「おお、お弁当。もしかして手作り?」

「さあ、どうでしょう?」

 言って、はぐらかしながらくるりと踵を返す。彼女は僕の方を振り返らずに、

「よし、それじゃあ、今日のメインの自転車を買いに行こう」

 右手を大きく掲げてどんどん足を進めて行った。


 サイクリングショップは駅前の通り沿いにあり、天気が良いので店の外の屋根の無い部分にまで大量の自転車を飾ってはお客さんの目を引いている。自転車のタイプから色まで色々な種類があって目移りしてしまうが、今日の目的を考えるとある程度条件が絞れてくる。

 まず、二人乗り様に後ろの座席か荷物置きの場所が必要になる。それと運転するのは僕だからある程度、ギアが付いた物か欲を言えば電動が有難い。

 まあ、さすがに電動自転車で女の子と二人乗りで海に行くというのは絵にならないから止めておいた方が良いだろう。

「結構色々種類あるけど、これが良いみたいなのある?」

 店を二人で回りながら紗千に聞いてみる。

 僕は、お店の二階に住まわせて貰ってから一度も自転車が必要だなと思った事は無く、どちらかというと、長い坂道の上にアパートが有り、常の移動をバスで行っている彼女の方にこそ必要なんじゃないか?と思ったからだ。

「私がピンクが良いって言ったら、今日はそれ乗ってくれるの?」

「いや、まあ、でも、しょうがないかな」

「嘘だよ。あんまり高く無ければ何でも良いよ」

 と、言う事で店員さんの手書きポップで一番人気と派手に書かれていた白の自転車にする事にした。

 ちゃんと後ろには荷台が付いており、ギアも六段までは切り替えられる。

17.03.29 加筆修正

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