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決断(七)

 僕と米蔵さんの話は、とりあえず一旦区切りが付いたという事で終わりになった。当然、自分たちの話が終われば聞こえて来るのは隣の話だが、簡単な自己紹介とか店の紹介などは終わっているようで、千広さんが依頼を聞いて詳しい事を話し始めていた。

「では、坂下さんの依頼はお付き合いしていた人にお気持ちを伝えたいという事で大丈夫でしょうか?」

 いつの間にか、米蔵さんの笑い声で集まっていた視線はどこかへ消えてしまい、正面に座る千広さんへと真剣に眼差しを向ける坂下さんと呼ばれた女性が恐る恐る尋ねた。

「あの、失礼なんですけど」

 そう前置きをして、

「本当に、生きている人に気持ちを伝えられるんでしょうか?」

 その言葉を聞いて、僕と米蔵さんの視線は一気に彼女へと向かう。当然、それに気が付いた坂下さんは驚くが、

「ああ、すまんね。話を続けてくれ」

 米蔵さんが謝って促すと、軽く舌打ちをした千広さんが笑顔を作り直して正面に座る彼女へと説明を始めた。

「もし貴女の伝えたい気持ちというものが手紙でも大丈夫だと言うのであれば、こちらに渡してくれれば確実に届けて差し上げることが出来ます。ですが、返事を貰って来る事は出来ませんし、確実に一方通行になってしまいますので、その辺はご了承ください。もしも、直接会話をして気持ちを伝えたいとかになるとちょっと難しい話になってきますね」

 千広さんを表情をコロコロ変えながら身振り手振りで説明した。

 彼女はそれを聞いてしばらく頷いた後、

「手紙で大丈夫です。今までの感謝を伝えたいだけですので」

 言い切った。が、そのまま何かを思い出したようにクスッと自嘲気味に笑い、

「たくさん時間はあった筈なんですけどね、本当に伝えなきゃいけない事を何にも言えなかったので、ここを紹介して貰って本当に助かりました」

 と、続けた。


 その後は他愛も無い会話を四人でして、米蔵さんと坂下さんは帰って行った。二人の後姿を見送った僕は、千広さんに声を掛けられたような気がするが、自然と無視して自分の部屋へと向かうべくゆっくりと階段を上がった。

 部屋のドアを後ろ手で閉めると、そのままベッドまで向かいダイブし、寝転がったまま携帯電話をポケットから取り出した。


 「相談。するしかないよなあ」


 僕以外誰もいない空間で、一人言葉を零す。

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