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加速(八)

「デートって言えばさ」

 ひとしきり笑い合った後で紗千がふと言葉を漏らした。

「初デートの時、私が真吾のお店まで迎えに行ったでしょ?」

 あの日は、突然現れた紗千にデートをしようと提案され、そのまま千広さんに直談判までして僕の午後からの休みを取りつけた。その行動力に改めて感心すると共に、女の子なのに男らしいなあと、少々凹んでしまった。しかし、そんな態度を彼女に見せる訳にもいかず、

「あの時は吃驚びっくりしたよ。突然やって来て、デートしよう!だもん」

 そう言って笑って見せる。

「初めてデートに誘うなら直接の方が良いのかな?って思ってさ」

 今、それぞれの持っている携帯電話などで、声も掛けずに呼び出しが出来る時代に直接会って誘った方が良いと思うなんて、彼女は意外と古風な人間なのかもしれない。そう思っていると、

「それに」

 小さくそう前置きした彼女は、

「連絡先分からなかったし」

 おどける様子も、悪戯っぽい表情も無く、真顔で言っていた。

「あの、手帳みたいなやつには載ってないの?」

 思い出して言ってみるが、

「あれには個人情報は載せちゃダメって話みたいでね」

 そういえば、千広さんも口煩くそんな事を言っていたような気がする。しかし、誰がどこそこで働いているなんて情報が載っている時点で個人情報のような気がするけど、今はあまり関係無いかと、あえて言わなかった。だから、僕は、

「そうなんだ」

 と、適当に相槌を打って、

「あ、この世界って携帯電話ってあるのかな?」

 紗千は真顔だった顔から苦笑いを浮かべ、自分のズボンのポケットに入っていた手の平サイズの薄い板をゆっくりと取り出した。

 僕はそれに驚き、

「あ、携帯電話あるんだ」

 突然出されたそれを見て引き攣った笑顔で言う僕に、紗千も同じような笑顔で頷きを返してくる。それを見ながら、あれこれ色々と考えを巡らせる。

 今まで携帯電話が必要だと思う事は無かったし、街の中で使っている人を見掛けることも無かった。千広さんや紗千が持っている不思議なノートが存在している事で、それが携帯電話の代わりになっているものだと勝手に思い込んでいたせいで、携帯電話という物が存在しているとは思わなかった。

「それって僕でも買えるものなのかな?」

「普通に駅ナカにショップが入ってるよ?」

「そうなんだ」

 僕はショックを隠しきれなかったが、

「じゃあ、最初の給料は携帯電話を買う事に使おうかな?」

 そう、紗千とこまめに連絡を取る為に。

17.03.20 内容修正

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