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距離(七)

 唐突な質問にも作った笑顔は変わらず、

「どこって言うか、目的地なんて作らずに適当に、どこか面白いところ無いかな?って感じでふらふらしてただけだよ」

 僕の反撃を物ともしない素晴らしい返事だった。彼女は更に、

「真吾君こそ、わざわざ私の家までやって来て話したい事って一体何かな?」

 笑顔は変わらないが、僕が何の話をしに来たのかを知っているような表情。そして声だった。

「そんな事言って、大体分かってるんでしょ?」

「さあ?全然見当も付いてないけど?」

 きっと彼女は嘘を言っている。でも、そんな事は関係ない。

「話したい事は二つあるんだけど」

 そう前置きをして、

「ここに来る前にね、千広さんに相談したら紗千の事はちゃんと本人に尋ねろって言われたんだ。あの日、記憶が残ってるのも辛いって言ってたでしょ?きっとここに来る前に何か辛い事があったのは、分かるんだけど、それが何なのかは聞かないよ。やっぱり個人的な事だし、そういうのは話したい人の方が圧倒的に少ないと思うしね?」

 でも、

「でも、紗千が辛いって思ってる事を僕がどうにかしてあげられるなら、力になりたいんだ」

 正面、紗千の顔が一瞬真顔になり、

「ありがとう」

 と、小さく呟いた。

「あ、いや、お礼とかは――別に僕が勝手に思ってた事だから、改まってそんな感じになると何か恥ずかしいって言うか、正直反応に困る」

 それを聞いた紗千がクスクスと笑い、

「さっきまでちょっとカッコいいなって思ったのに、なんで急にそんな弱っちくなっちゃうかな?」

 言われた僕も彼女と同じように笑うしかなかった。


「で、話したい事が二つあるって言ってたけど、もう一つは?」

「あの時さ」

 そう、彼女とデートをしたあの日、彼女が口にした言葉の真相。

「誰かを殺しちゃうって冗談でもなかなか出て来ないんじゃないかな?って僕は思ったんだよね」

「私が、そういうのが出て来ちゃう人間だったってだけ」

「違うよ。少しだけかもしれないけど、紗千と一緒にいてそんな事考えるような人じゃないのは分かってるつもり」

 彼女が何も言わないので、続けて、

「何か理由があったんじゃないの?僕に何か話を聞いて欲しかったんじゃないの?」

 そう、あの時、僕はあまりの事に何も言えなかった。

「でも、僕はあの時、何も言ってあげられなかったから――」

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