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距離(四)

 長テーブルの上に置かれた電話を使い、しばらく米蔵さんは粘ってくれたが、

「ダメだな。どこかに出掛けてるのか、全然出ないな」

 そう言って受話器を元の位置へと戻した。

 自宅の電話に掛けて連絡がつかないとなると、直接行ってもあまり意味は無さそうだ。だからと言って闇雲に街中を探しても彼女を見つけるのは至難の業だ。

「紗千が立ち寄りそうな場所ってどこか無いですかね?」

「とは、言われてもね?俺もそこまで親しい訳じゃねえからな」

 米蔵さんは、そう言って椅子に腰を下ろす。

「随分とあいつにお熱みたいだけど、何かあったか?」

 僕はやんわりと否定しつつ、今日どうしてここを訪ねたのかを話した。


「あいつがどうしてここにやって来たか、ね?」

 きっとこの人は何かを知っているんだろう。彼の口振りからそんな気がした。

「俺の口から話しても良いが、仮にそれを聞いてお前さんはどうするんだ?」

 と、問われる。紗千の話を聞いて僕は何をしたかったのか、何も考えていなかった為に言葉がスッと出て来る事はなかった。でも、

「紗千は昨日、辛い事がたくさんあったって言ってました。その辛かった事を僕が忘れさせることは出来ませんけど、少しでも彼女の力になれたらって思うんです」

「何言われてもその決意は変わらんか?」

「はい!」

 米蔵さんは、僕の返事を聞いて頷きながら、

「おう、良い返事だ」

 言った。そして、更に続け、

「まあ、そうは言っても肝心の紗千がどこにいるのかは分からんけどな」

「え、なんか、今の流れだと紗千が行きそうな場所のヒントとか教えてくれる感じだと思ったんですけど」

「最初に親しくないって言っただろ?聞いてなかったのか?」

「いや、聞いてましたけど」

「全く当てが無いなら、自宅の前で待ってみるか?明日は仕事に出ると言ってたから、夜まで待てば会えるだろう?」

「それってなんか、ちょっとストーカーっぽくないですか?」

「仕事場まで訪ねて来てる奴がそこを心配するか?」

 そう言われ、確かにもう既に片足を突っ込んでるくらいの事をしてしまっているな。と、反省した。

 でも、そう思われたとしてももう一度、しっかりと彼女と話がしたかったので、

「分かりました。住所教えてください。夜まで待ってみます」

 強い決意で宣言した。

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