表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/117

対照(六)

「他にもこういうビックリした道具とか無いの?」

 もしかしたら無くした記憶を取り戻してくれる道具とかがあるかもしれない。なんて、期待はしていないけれど、僕がいる世界は本当に今までとは違う世界なんだということが実感出来る良い機会だ。くらいには思ってる。

「一番はアレだよ」

「ああ、アレね!」

 チャンスだと思って乗っかってみたが、

「この街自体かな?」

 何事も無かったようにスル―されてしまった。意図的という感じはしないので、多分彼女は本気で気付いていないのだろう。

「この街ってこの世界って事でしょ?」

「うん」

 彼女は嬉しそうに笑い、

「せっかくの現実じゃない世界なんだから、楽しまないと損でしょ?」

 その言葉で一つ思った。今回、僕をデートに誘ったのもきっと、彼女の言う『この世界を楽しまないと損』の内の一つなのだろう。少しだけ落ち込みそうになるが、彼女がデートをしたい相手に自分が選ばれた事は光栄に思わなければならない。

「紗千はさ、デートでしてみたかったことって無いの?」

 言った後で、僕はすぐに言い直す。

「デートじゃなくても、何かやりたかった事とか」

「もしかして、私の心の残りが気になってるの?」

 彼女の大きな目が僅かに細くなった。

「いや、そういう事は全然無くて!せっかくのデートなんだし……」

「冗談だって、真吾君は優しいね」

 こちらに向けていた顔を再び、上空に広がる青い空と白い雲へと向けるように上げ、

「真吾君こそ何か無いの?女の子と一緒にしたかった事とかさ」

 逆の立場になると良く分かる。女の子と遊ぶという機会がほとんど無かった人間にとってはこんなにも酷な質問は無い。だから、

「まあ、デートもやりたかった事の内の一つだとは思うけど」

 なんて、返した。

「じゃあ、今日で一つクリアになっちゃう?」

 僕は彼女の方を見ずに、真正面を向いて頷きだけで返事をした。

「私は、自転車の二人乗りとかかな?漫画とか映画とかさ、そういうのでは良くあるんだけど、実際となるとなかなかね?しかも、今は怒られちゃうから」

 確かにフィクションの中ではよくあるシチュエーションだけれども、自転車の二人乗りは禁止になってしまったので、実際にやろうとすると、わざわざ私有地におもむかなくてはならない。しかし、

「でもさ、ここなら出来るんじゃない?自転車の二人乗り」

 そう、法律やルールがあるのか分からないけれど、自転車の二人乗りくらいでは怒られない世界なのではないだろうか。

 僕の提案に彼女も目から鱗だったようで、

「あ、確かにそうかも!」

 弾けた笑顔をこちらに向けて喜んでくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ