対照(三)
確かに気温が高くて暑いのだが、彼女が腰を下ろした左側だけ体がやけに熱っぽい。
僕は一息吐き出して、受け取ったジュースのキャップを回した。
「それにしても今日は暑くなったね」
水の入ったペットボトルを口から離した彼女はそう言って、こちらへと視線を移す。僕はそれに気付かない振りをしながら炭酸を喉に流し込んだ。
どうにもこうにもよそよそしい態度の僕だけれども、これでも少しは良くなった方だと自分では思っている。
紗千さんが店まで僕を誘いに来た後、ちゃんとしたデートがしたいという事で、改めてお昼に駅で待ち合わせをする事になった。その足で駅から歩いて行ける距離にある百貨店へと向かい、買い物をするはずだったのだが、特に目ぼしいものが無かったのか、ウィンドウショッピングになってしまった。
そして、近くのファミレスに入り二人でお昼ご飯を食べたのだが、終始の緊張でほとんど何も覚えていないのが辛いところだ。
特に話で盛り上がる事も無ければ、何か目的がある訳でも無い。何故、この人は僕をデートに何て誘ってくれたんだろう。
「季節は無いって話だけど、夏がたまにやって来るのかな?」
彼女は、そんな事を呟きながら上着の首元を軽くつまんで前後に動かして中へと風を送っていた。その姿を見てしまい、僕はまた視線を逸らした。
「紗千さんもそこら辺は詳しくないんですね?」
その返事よりも先に、
「だから、同い年なんだから敬語じゃなくて良いって言ったでしょ?」
そう言われる。だから、
「紗千もそこら辺は詳しくないの?」
改めて言い直してやった。それが嬉しかったのか、彼女は笑顔を僕の方に向けながら、
「よろしい」
と、満足げに言った後、
「私もここに来てからあんまり日が経って無いしね?」
普通に話せている今がチャンスだと思い、デートに誘われてからずっと聞きたいと思って大切に取って置いた事を聞いてみる。
「千広さんに聞いたんだけど、紗千は反動がほとんど無かったんでしょ?」
服の首元をつまんだままの格好で動きを止めた彼女は、一瞬の間を置いて、
「――うん。そうだね。どうしたの急に?」
「あ、いや、僕がほとんど覚えてないから逆にほとんど覚えてる人はどんな感覚なんだろうな?ってちょっと興味があっただけ。僕も詳しい話はちゃんと聞いてないし、まだ理解も出来てるか微妙なところだから」
「なるほど」
紗千は頭の中でゆっくりと僕の言葉を噛み砕くように頷いた。




