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対照(一)

 朝から昼になって夕方がやって来て夜になるというサイクルは、僕が元々いたであろう世界と同じようにこの世界でも変わりなく続いている。しかし、基本的に時間は進まないと説明を受けた通り、季節の巡りというのはほとんどない。今日という日がやって来るまでは僕もそう思っていた。

 朝、起きた時には少し暑いかな?と、感じていたのだが、昼前から少しずつ気温は上がり始め、今現在の時間である午後一時過ぎでは、まるで夏のような暑さになっており、目の前を通り過ぎて行く人々の服装もそれに応じた薄着の恰好になっていた。


 今まで普通だった長袖なんて誰も着ていない。かくいう僕も半袖にジーパンというラフな格好で、初めて訪れた街の公園のベンチに腰を下ろしていた。ちょうど木陰になっているところを紗千さんが見つけたのである。

 なぜ、こんな事になっているのかというと、話は今日の暑さが気になり出した午前中へとさかのぼる。


 薄い長袖Tシャツでお店の外を掃除していた僕の目の前に、特に連絡も無く唐突に顔を出した彼女。近藤紗千。僕と同い年だという彼女が何故お店にやって来たのかは、その時まだ何も知らなかった。

 千広さんとも顔見知りだと思っていたので、お店の方に用事があるんだろうと、

「あ、この前はどうも」

 手を止め、頭を下げながら軽く挨拶をして、

「お店は空いてるんで良かったら入ってください」

 業務連絡程度にそう言うと、再び手を動かして掃除を再開させる。


「この前より良い顔してるね?」

 幹線道路から一本路地に入ったとは言え、そこそこ雑多な喧騒が広がるここでも明るくハツラツとした声が綺麗に周囲に響いていた。

「なんかスッキリした感じの顔になってる」

「まあ、あの時悩んでた事は解決というか、そんな感じになったんで」

 詳しく説明するのも手間になってしまうと考え、ある程度の言葉で簡単に済ませる。彼女の用事が僕では無く、お店の方にあると思っていたので、これは仕様がない事だった。


「そっか、それは良かった」

 笑顔が言う彼女につられて、僕もぎこちない笑顔を向ける。それと同時に意識もそちらへと向いてしまうので箒を動かす手が止まってしまう。

「今日さ、デートしてくれないかな?」

「――はい?」

 一瞬にして『デート』という単語が頭の中を駆け巡る。


 中学の英語の授業中に日付という意味で教科書に載っていた『dateデイト』という文字を見て少し意識をしてしまった記憶が蘇る。思春期であれば仕方の無い事だが、こちらに来て最初に思い出した事がそんなどうしようもない記憶であった事が同時に僕を落ち込ませる。

 何か深い思い入れでもあったのだろうか?

17.02.26 サブタイトル変更

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