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温習(九)

「あ、すいません。色々質問しちゃって、仕事の話を続けてください」

 そう言って、僕は目を閉じ、先程された説明を頭の中で整理した。


 すぐ向こうでは、こちらを気にもせずに仕事の話が再開された。

「さっきも言ったけど、京香ちゃんは納得してくれたよ。最初は手紙を送って気持ちを伝える方法も考えたんだけどね。京香ちゃん自身が考えて、それは止めにした」

「まあ、本人が納得してるなら俺は何も言わない」

「新しい恋を探すって前向きに帰って行ったよ」

 千広さんは、微笑みながら頷くと、すぐにこちらを向き、

「新しい恋を探すってさ」

 微笑から、見ているこちらが不快になるようなニヤニヤとした笑顔でそう言って来た。

「――きっと、僕みたいな素敵な男性を見つけるんですよ」

 ちょっと、上手い事返せたのでは無いだろうか?


「で、今回の仕事は?」

「まあ、手紙なんだけど」

 千広さんはレジテーブルの上に二見さんから預かっていた手紙を置くと、

「二見静さんって女性が、旦那と息子さんに手紙を送って欲しいそうだ。返事が貰えない事は了承済みだ」

「はいはい。了解。さっきも言ったけど、時間が経ち過ぎてると無理だからな?」

「いや、そこなんだけどな?」

 千広さんの顔が真剣になるので、僕はバレない様にゆっくりと聞き耳を立てた。

「この手紙はどうしても届けてやりたいんだけど――」

 その続きの言葉もあったように感じたが、八十島さんが間を空けずに入って来た。

「ああ、母親から息子への手紙だからどうしても届けたいってか?相変わらず、親子の絆みたいなのに弱いんだな」

 そう言って笑うと、

「分かった分かった。他でも無い千広くんの頼みだからね」

 テーブルに置いてあった手紙を自分の膝の上に置いていたハンドバッグに入れると、そのまま立ち上がり、くるりと向きを変えて入り口の方へと歩いて行く。そして、

「自分の母親にもそれくらい素直になれりゃ良いんじゃないかね?」

 また大きな笑い声を上げて彼は店から出て行った。


 千広さんと二人になった店内。

「僕も八十島さんと同じ意見です」

 どんな顔をするのだろうか?と、彼の顔を見ながら言ってやると、

「うるせえな」

 思った通り、ばつが悪そうな表情をしながら照れ臭そうに呟いた。


「お前、今日は休みなんだからさっさと部屋に戻れよ」

 二見さんの手紙の件も無事確認出来たので、僕は千広さんの言葉に従って大人しく自分の部屋へと戻る。降りて来た時よりも気分は晴れやかで、鼻唄交じりに階段を上がった。

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