表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/117

温習(五)

 閉められた扉を見つめながら、千広さんの言っていた事を思い出す。

 百瀬さんと一君の心残りを解消したのは、本当に僕だったのだろうか?

 確かにきっかけを作ったのは僕だったかもしれないけれど、二人とも最後は自分自身で心残りを解消していたような気がする。

 素敵な絵を完成させたのは百瀬さん自身だし、一君も電話で直接自分でお礼を言った訳だ。


「――そうか。自分がやり残した事とか後悔してる事、心残りになってる事を何とかしたいから、皆この店を訪ねて来るんだ」


 絵を描く場所を仲介・・して、僕らの力でどうにもならないのならば専門家の人を紹介・・する。そして、心残りや後悔してる事を、みんな相談・・しに来るんだ。それが八百万仲介紹介相談所。

 何だか、少しだけ心がスッキリした。答えを直接聞く訳じゃなく、自分で導き出せたのが大きいのかもしれない。なんだか大きな達成感を得られたような気がした。


「やって来る人にとってこんなにも重要なお店で、右も左も分からない僕が働いてて大丈夫なのか?」

 この世界の事情を知ってしまった今となっては、そこそこのプレッシャーが掛かる仕事場であるという事が再認識出来た。

 それでも、この店の雇われ店主である千広さんが、『いつまででも居て良い』と言ってくれた事はとても心強く、同時にすごく嬉しい言葉だった。だから、大変かもしれないけれど、この仕事を続けようと思った。

 そして、いつか自分の後悔していた事を思い出そうと心に固く誓った。


「それにしても、その心残りが無くなったらどうなるんだろう?」


 僕がここで仕事を始めてから出会った人達の後悔、心残りを思い出してみる。

 百瀬さんは、絵を描きたかった。九十九兄弟は、きっと喧嘩の仲直りだったんだと思う。京香さんは好きな人への告白で、五十棲さんはおふくろの味をもう一度食べたい。

 千広さんのお母さんの十和子さんは、何になるんだろう?日記帳を見つけたいって話だったような気がするけれど、千広さんが強引にまとめて帰しちゃったから良く分からないな。あの辺はまだ謎な事が多い。でも、千広さんに直接聞くと嫌がられるからなあ。

 一君は百瀬さんにお礼を言えた。市川三久さんは旅に出たいって話だったし、二見静さんは手紙を渡したいって言っていたけれど、あの日は色々あったせいで詳しく話は聞いていない。


「あの手紙どうなったのかな?」

 僕以外誰もいない部屋に呟きだけが広がって行く。


 あの時、手紙の返事は期待するなって千広さんは言っていた。あれは一体どういう意味なんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ