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好敵手(四)

 店の前に着いた時には夕方手前という時間になっていた。

 空を昇っていた太陽もゆっくりと沈み始め、もうすぐ夕陽に変わろうとしている。

 店の玄関前、そこに立つ僕の気持ちは、まさに討ち入り前の赤穂浪士のようだった。


 引き戸にゆっくりと手を掛けて引く。

 棚や乱雑に置かれた品物を避けるように奥へと進んで行くと、いつものようにレジテーブルに肘をついて本を読んでいる千広さんの姿があった。毎日毎日飽きもせず、一体どんな本を読んでいるのか。それも気になる所だが、

「ただいま戻りました」

 今日は聞きたい事が山ほどあるので、とりあえず後回しだ。

 千広さんからは必要最低限の、

「おかえり」

 という言葉が返って来たが、視線は本に向いたまま僕の方を一切見ていない。あまり付き合いは長くないが、もう既に慣れっこだと言えるくらいには、この状況と同じ場面に何回も遭遇している。だから、気にしないで自分の話をする。

「歩道橋のとこまで行ってたんですけどね?」

 まずは先程出会った女の子の話だ。

「そこで同じ年の女の子に会ったんですよ。その子、僕の事を知ってて千広さんの事も知ってたんです。名前は確か紗千さんって言ったかな?」

 言って、チラッと彼を見ると、眉をしかめた微妙な表情をしている。これは何かを知っているなと思った僕は、

「あの子、どういう人なんですか?」

 本を置いた千広さんは、溜め息を吐きながら、

「まあ、偶然って事は無いよな」

 そう前置きとして呟くと、

「ちょくちょく話には出てると思うんだけど、俺が人探しをしてる時があるだろ?」

五十棲いそずみさんのお母さんとか、この前の二見ふたみさんの時のやつですよね?」

 僕の言葉を受けて頷いた千広さんは、

「あれは色んな人が協力し合って出来てるシステムなんだ。まあ、簡単に言うと一つのノートを皆で共有している感覚だな?誰が書き込んでも全員が見られる。それで情報のやりとりをしてる」

「ネットワークって言ってたくらいですからね?」

「だな。で、五十棲さんの場合は誰も書いてなかった。二見さんの場合は病院で誰かが見掛けたって情報だけが載ってたって事だな」

「なるほど。それで、紗千さんは?」

「ああ、あいつは書き込みをしてる人間の一人だよ。俺達の同業者と言うか商売敵と言うか、まあ、似たような事してる人間だ」

「それで僕や千広さんの事について詳しかったんですね……」

 僕は納得して、いつもの自分の椅子へと腰を下ろす。そして、一番引っ掛かっていた質問を聞いてみることにした。

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