手紙(四)
「なるほどな」
千広さんは手紙を読みながら小さく呟いた。
僕宛への手紙だったけれど、彼女に専門家の人を紹介したのは千広さんだし、そもそもこのお店も千広さんが管理している訳だから見せた方が良いと思い読むように勧めたのだが、最初は物凄い勢いで断られた。別に読まれても恥ずかしい事が書いてある訳じゃないからと半ば無理矢理に読ませたのだが、出て来たのは先程の感想だ。
まあ、なんというか気持ちは分からなくはない。別に自分に来た訳では無いから何て言ったら良いのか分からないんだろうな。と、思っていると、
「この子、若い割にすごいしっかり書いてくれてるな」
それは僕も思った。最初いきなり拝啓で始まったから七尾さんからだとは全く思わなかったくらいだ。
「お前、この最後の文を読ませたかっただけだろ?」
そう言って千広さんが指差してくるのは文末にあった『次に誰かを好きになる時は、真吾さんみたいな人が良いなと思っています』という文だった。
全くそんな気持ちは無かったので、
「いや、そんな事全く無いです」
素早く否定し、
「でも、そういう風に書いてくれるなら、真吾さんみたいな人じゃなくて、普通に僕で良くないですか?」
真剣に言う。
千広さんは大声で笑いながら、
「確かにな」
と、納得してくれた。
次に千広さんが口を開いたのは、少しだけ時間が経った後、
「でも」
そう接続詞だけを呟いてゆっくり続けた。
「この子がわざわざ手紙を書いてくれたって事は、少なからず真吾の行動が彼女の力になってたって事だよな?」
「そう……なんですかね?」
正直、手紙を送ってくれた事は嬉しかったけれど、そんな深い所まで考えていなかった。
それに千広さんは僕の行動と言ってくれてはいるけれど、あの時の僕は何も出来ずにただ彼女の事を千広さんに任せるしか無かった訳だから、力になっていたかどうかは分からない。むしろしっかりと状況を見て、無理なものは無理と考えて、専門家に紹介をした千広さんの行動の方が力になっているんじゃないだろうか。
何も考えず、闇雲に七尾さんの思い人を探そうとするなんて、やっぱり今考えると無鉄砲でしか無いと自分でも思う。千広さんが止めてくれて正解だったと。
「僕は千広さんの方が立派だと思います。なんか、こうやって言うと偉そうですけど」
苦笑いで伝えると、
「いや、この手紙はお前に来たんだ。胸張って良いんじゃないか?」
そう言って手紙を差し出し、
「悪く無いのかもな?親切の押し売りってやつも」
微笑んで言ってくれた。




