表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/117

手紙(三)

 糊付けされた封筒の上の分を丁寧に破り、中に入っていた桃色の便箋を取り出す。

「あれ?入ってるのはこれだけ?」

 中には写真が入っていると思い込んでいたので、つい声が漏れてしまった。

 気を取り直して三つ折りにされた便箋をゆっくりと開く。宛て名のように綺麗な文字がそこにも広がっており、書き始めは『拝啓』という堅苦しい言葉であった。


 拝啓 斎藤真吾様


 お元気ですか? その後、体調など崩してはいないでしょうか?

 お久しぶりです。先日はご迷惑をお掛けしました。七尾京香です。


 私は、あれから鈴木店長さんにお教え頂いた専門家さんの所に足を運び、

 詳しい話をしたり、どうやって思いを伝えるかなど色々と忙しい毎日を

 送っています。


 お店に行った時に、何も出来なかった私に親切にしてくれて本当に

 ありがとうございました。そして、少しでも力になってくれようとした事

 本当に本当にうれしかったです。


 直接お話をしにお店まで行きたかったのですが、都合が合わずにお手紙に

 なってしまいました。でも、実際に会って話すと緊張してしまうので、

 この方法が一番良かったかな?とも思っています。


 長くなりましたが、本当にお世話になりました。

 次に誰かを好きになる時は、真吾さんみたいな人が良いなと思っています。


                                     敬具


                                     七尾京香


 読み終えて、

「七尾京香さんからでした」

 隣に座る千広さんにそう告げる。

「何て書いてあった?真吾とは別の人に告白出来ましたってか?」

「ちょっと、おちょくらないでくださいよ」

 眉を吊り上げ睨んでみるが、

「それ、大事に取っとけよ?」

 不意に笑顔で言われて、僕の表情が元に戻ってしまう。

 怒るタイミングを失ったというか、普段なら少しくらい何か言って返してくる所なのに、全く思っても居なかった態度と言葉に驚いたのだ。

 千広さんは更に続け、

「誰かに言われた言葉なら忘れたらそれで終わりだけど、手紙は誰から貰ったか忘れても形だけはちゃんと残るからな?」

「そう、ですね」

 雰囲気の違う千広さんに気圧され何も言えなくなってしまった。

 千広さんが過去に色々あった事は聞いたけれど、きっとまだ僕や誰にも言えない過去がたくさんあるんだろうな。彼の優しい笑顔を見ているとそんな風に感じてしまう自分がいた。

17.02.11 内容修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ