手紙(三)
糊付けされた封筒の上の分を丁寧に破り、中に入っていた桃色の便箋を取り出す。
「あれ?入ってるのはこれだけ?」
中には写真が入っていると思い込んでいたので、つい声が漏れてしまった。
気を取り直して三つ折りにされた便箋をゆっくりと開く。宛て名のように綺麗な文字がそこにも広がっており、書き始めは『拝啓』という堅苦しい言葉であった。
拝啓 斎藤真吾様
お元気ですか? その後、体調など崩してはいないでしょうか?
お久しぶりです。先日はご迷惑をお掛けしました。七尾京香です。
私は、あれから鈴木店長さんにお教え頂いた専門家さんの所に足を運び、
詳しい話をしたり、どうやって思いを伝えるかなど色々と忙しい毎日を
送っています。
お店に行った時に、何も出来なかった私に親切にしてくれて本当に
ありがとうございました。そして、少しでも力になってくれようとした事
本当に本当にうれしかったです。
直接お話をしにお店まで行きたかったのですが、都合が合わずにお手紙に
なってしまいました。でも、実際に会って話すと緊張してしまうので、
この方法が一番良かったかな?とも思っています。
長くなりましたが、本当にお世話になりました。
次に誰かを好きになる時は、真吾さんみたいな人が良いなと思っています。
敬具
七尾京香
読み終えて、
「七尾京香さんからでした」
隣に座る千広さんにそう告げる。
「何て書いてあった?真吾とは別の人に告白出来ましたってか?」
「ちょっと、おちょくらないでくださいよ」
眉を吊り上げ睨んでみるが、
「それ、大事に取っとけよ?」
不意に笑顔で言われて、僕の表情が元に戻ってしまう。
怒るタイミングを失ったというか、普段なら少しくらい何か言って返してくる所なのに、全く思っても居なかった態度と言葉に驚いたのだ。
千広さんは更に続け、
「誰かに言われた言葉なら忘れたらそれで終わりだけど、手紙は誰から貰ったか忘れても形だけはちゃんと残るからな?」
「そう、ですね」
雰囲気の違う千広さんに気圧され何も言えなくなってしまった。
千広さんが過去に色々あった事は聞いたけれど、きっとまだ僕や誰にも言えない過去がたくさんあるんだろうな。彼の優しい笑顔を見ているとそんな風に感じてしまう自分がいた。
17.02.11 内容修正




