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手紙(一)

 これは僕の勝手な思い込みだと思うのだけれど、個人経営している店舗には漏れなく郵便受けが無いような気がする。そのお店が住宅を兼用している場合は裏手などに設置されているのかもしれないけれど。


 まあ、その例によってうちのお店であるこの骨董品店にも郵便受けが設置されていない。理由はとても簡単な事で、外から見た時の印象だと千広さんが言っていた。

 大きな時計と手彫りの看板がしっかりと店の雰囲気に合わせて設置されている訳で、それをわざわざ壊しに行くような真っ赤な郵便受けを付けるメリットはほとんど無いと言っていい。

 

 そして、居住スペースへの入り口も店舗の入り口と兼用になっているので、そもそも郵便受け自体がこの店には存在していないのだ。ならば、それが必要な時はどうするのか?

 今、店の床を掃いている僕の目の前、引き戸から見えるシルエットが軽く会釈をしている。

 それは郵便受けの存在が無い事で一番困っているであろう郵便屋さん張本人で、彼は引き戸をゆっくりと開けながら、

「こんにちは」

 と、遠慮がちに顔を覗かせた。

「すいません、いつもご苦労様です」

 一言(ねぎら)いの言葉を掛ける。

 本当ならば、バイクから降りること無く郵便受けに入れてお仕事が終わりのはずなのに、わざわざ降りて足を進めて挨拶までして手渡しだ。労いの一言くらいあっても良いじゃないか。

「今日はちょっと多めですね」

 そう言って重なり合った封筒やハガキを渡してくれる。

 彼は、僕が受け取ったのを見ると、そそくさと出て行ってしまった。きっとまだまだ配達しなければならない手紙がたくさん残っているんだろう。


 僕は受け取った手紙の宛て名などを確認しながら店の奥へと移動する。

 普段、手紙を確認するのは千広さんの仕事になっている。なっていると言うか、僕に手紙なんて来る訳が無いので最初から全くノータッチだったのだが、

「ん?」

 手紙と手紙の間、真っ白な封書の宛て名には綺麗な文字で斎藤真吾様と書かれていた。

 見間違いかと思い、他の手紙の宛て名も全て確認してみたが、他はお店の名前や千広さんの名前になっていて、この封書だけが僕の名前になっていた。


 全く思い当たる節が無い。呪いの手紙とかだったらどうしよう。でも、字が綺麗。千広さんが帰って来るまで開けるのは止めておいた方がいいよな。などと一瞬にして色んな事が頭の中を回って行く。

17.02.11 誤字修正

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