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道連れ(六)

「それは偶然ですね」

 驚いたように零したのは百瀬さんだった。

 僕と市川さんの関係から始まり、どうしてこの駅にやって来たのかを全て1から説明した結果の産物。それが先程の『偶然』という言葉だった。

 そんな言われ方をされれば、

「どういう事ですか?」

 市川さんが疑問に思うのも無理は無いというものだ。だから、僕は改めて今、目の前にいる人間が店にいる時に話した旅に出ると言っていた百瀬さんであるという事を彼女に告げる。

「絵描きさんの!」

 まるで芸能人にでも会ったかのように喜び、そして両手を出して握手求めている。

 彼女が少し変わっていると感じるのは入院生活が長かったせいで、あまり世間の事を良く知らないせいなのか、それとも元々の性格なのか、それは僕には分からない。

 ただ、決してそれが嫌という事はなく、僕よりも年上にも関わらず、可愛らしく純粋な人だなと思わせてくれる。


「実は、俺もどこに行くか決まってないんですよ」

 いつの間にか二人だけ盛り上がってる中で、そんな話が出た。

「絵を描く旅っておっしゃってましたよね?」

「そうですね」

 相槌を打った百瀬さんが、市川さんから視線を逸らし、僕の方へと首を動かす。

 会話にほとんど入って居なかったので驚いたが、

「俺も前に真吾君にお世話になったんです。大きな絵が描きたいってね。で、真吾君が一日付き合ってくれて結果、素敵な絵を素敵な場所に描く事が出来たんです。物凄く嬉しかった」

 それだけでは終わらない。

「それと同時に感謝もしましたし、真吾君ってすごいなって思ったんです。俺はあんなところに絵が描けるなんて思って無かったんで」

 褒められるなんて滅多に機会が無いので一体どんな顔をして良いのか分からない。

「俺も真吾君みたいな行動力を持とうと思って今回、旅行して色んなとこで絵を描かせて貰おうかな?って思い付いたんです」

 僕がやった事が百瀬さんに影響を与えたかと思うと、恥かしいのが第一なのだが、何だか申し訳無いような気持ちになってくる。


「素敵なお話ですね?」

 ついでに市川さんまで話に乗っかってこっちを見つめて来るからたまったものじゃない。

 もうここから逃げ出したい気持ちでいっぱいなのだが。


「もし良ければ一緒に行きませんか?」

 市川さんが百瀬さんにそう言う。

「実は、真吾君と一緒に行くっていう話だったんですけど、あんまり乗り気じゃ無いんですよね?」

「いや、まあ」

 図星を突かれてドキッとする反面、百瀬さんが誘われたという悔しさもあり、市川さんと一緒に旅行が出来ないと思うと、ちょっとだけ残念な気持ちもあった。まあ、僕も男なのだからしょうがない。


 それに旅行というのはとても魅力的だとは思うけれど、タイミングが今じゃないような気がした。

 そんな事を考えながら、電車に乗り込む二人の背中を見ながらゆっくりと手を振った。

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