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道連れ(二)

「あ、すいません」

 市川さんの驚いた表情と千広さんの呆れた顔を見てしまい、条件反射的に謝罪の言葉が口から出てしまった。しかし、きっと今日あった事を説明すれば、あんな事を叫んでしまった僕の気持ちも少しは分かってくれるだろう。だから、

「市川さんの依頼についての詳しい話は後でちゃんと聞きますから。まずは僕の話を聞いてくれませんか?」

 とりあえず、千広さんにそう言ってから、すぐに市川さんの方へと視線を移して、

「えっと、多分聞いてても面白くは無いと思いますけど、ちょっと聞いて貰ってもいいですか?」

 尋ねると、彼女はまた笑顔を作って、

「はい。ゆっくりで大丈夫ですから落ち着いて話してくださいね」

 そんな優しい言葉を掛けてくれる。

 ずっとこちらを睨み付けて来るどっかの売れない骨董品店の店主とは大違いだ。


 僕は深呼吸を一回挟んで、今日あった事を話した。

 このレジテーブルで、千広さんに対してこういう風に話をすると、まるで自分が八百万仲介紹介相談所に何か依頼をしに来たように錯覚してしまう。という事はアルバイトは市川さんになるのだろうか?


 一通り、説明が終わると、

「おし、じゃあ次は三久ちゃんの依頼の話だな」

 一区切りさせるように千広さんがそう言った。

「いや、え?感想とか全くなし?」

「いえ、とても興味深い話だったと思いますよ?」

 市川さんのこのリアクションも正しいとは言えないが、全く無視よりはいくらかマシである。

「まあ、良いです。約束通り話は聞いて貰ったんで、次は市川さんの依頼の詳しい話を聞かせて貰えますか?」

 気を取り直してお仕事モードへと切り替える。


「私は小さい頃からあまり身体が丈夫ではありませんでした。外出する事も少なく、それどころか酷い時には何カ月も入院して病室から外の様子を眺める事しか出来ない生活をしていた時もありました。そんな時に考えていたのは、自分の足で好きな所へ旅行に行く事だったんです。で、せっかく身体が元気になったんですから、兼ねてからの夢だったその旅行に是非行きたいなと思っているんです」

 終始嬉しそうに話していた彼女の笑顔は、先程僕に向けてくれたものとはまた違った素敵な笑顔だった。

 市川さんは僕の話もしっかり聞いてくれたし、美人だし、あんまり嫌われたくは無いんだけど、

「素敵な話をして貰った所申し訳無いんですけど、旅行に行きたいなら別にこの店に来る必要無くないですか?」

 正に余計な一言だと自分でも思ってしまうが、言ってしまったものは仕方ない。

 恐る恐る二人の返事を待っていると、

「それが彼女の最後のお願いなんだから聞いてやれよ」

 千広さんが冷静に言い放った。

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